アンギャルド

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『Fence:防ぐ、守る』

 

防ぐのは自分への一撃

放たれる突きは全スポーツで2番目に早い。

 

守るのは自分の名誉

もともとは騎士、貴族の決闘である。

 

さあ

手袋を投げよ

鞘を当てよ

 

いざ!En garde!!


Rule&Analysis

クニツィア作の二人用ゲーム。


もともとはカード仕様だったり、『デュエル』というゲームとして再販されたりしていたが、この度めでたく日本語版登場。

パッケージ通り「フェンシング」を扱った珍しいゲーム。

さて、箱の左隅をご覧頂こう。

 

日本フェンシング協会が

公認している。


ということで、

イメージキャラクターとして日本人初のメダリスト太田選手。

ちなみにドイツフェンシング協会は日本より早く公認している。

まあ当然だ。

さて、タイトルの『アンギャルド』は「構え!」の号令

構えた後は何をするのかというと、


1.プレイしたカードの数字分移動プレイする

2.カードの数字と同じ距離に相手が居たら攻撃

3.1+2を両方、つまり移動攻撃


のどれかを行う。カードは1~5まで5枚ずつの25枚。

攻撃のときは同じ数字のカードを複数枚プレイ出来る

利点は後述の「受け流し(パリィ)」をされにくくなること。

攻撃された側もむざむざやられたりはしない。


 2.3.に対して:同じ数字、かつ同じ枚数のカードで

          「受け流し(パリィ)」

   3.に対して:好きな数字を出して「後退


が出来る。

 ここでちょっと注意点があって、通常の攻撃には「パリィ」しか出来ない。要はこの間合いで3枚攻撃を受けたら必殺である。

 一方、移動攻撃には「後退」が出来る。なので必殺の3枚攻撃だろうが、後方に跳んで躱すことができる。しかし、その代償として再度相手の攻撃ターンになってしまう。「後退」だけではターンが回ってこないのだ。


相手が移動のみ、または相手の攻撃をパリィしたら自分のターン。

間違えやすいのはカード補充のタイミング。

カード補充は相手のターンに移る前に行う。

つまり「パリィ」で使用した分は補充できない

「後退」のときは補充できる。


 さて、このゲームはお互いの必殺の間合いの読み合いの面白さも然ることながら、この「移動攻撃」がゲームをより熱くする。

「移動攻撃」は「後退」という選択肢があるため、基本的には必殺になり得ない。

しかし、この「後退」させる行為こそが本質なのだ。

 

お互い攻撃が成功せず、山札が尽きた場合「判定」になる。

このときの処理は、

 

1.手札を公開し互いの間合いのカードを多く持っていた方の勝ち

2.それでも決まらなければ、より前進していた方の勝ち

 

実はこのゲーム「判定」に持つれ込むことの方が多い

つまり「後退」とは、手番が来ないだけでは無く、2においても圧倒的に不利な行為なのだ。さらに移動できなくなっても負けなので、最後列に追い詰められた時点でほぼ敗北である。

 

 当然、プレイする上でいくつかのテクニックがある。

 

 最初は大きい数で一気に進んでいくべきだ。これは前述のように後ろに距離がないほど不利だから。敢えて自分は小さく刻んで自陣で待ち、大きい数でパリィを受けづらい攻撃をする、というのも手だが、これは中々勇気がいる。このゲームは後半ほど大きい数は使いづらくなるからだ。極端な話、手札に5しかないときに「移動攻撃」を受けたとしよう。これは「後退」するしかないのだが、それが必然的に5になるのだ。こうなると後は自陣に追い込まれて敗北するだろう。後半は大きい数が複数あるより、小さい数が複数あった方が攻防で応用が利くのだ。

 

さらにこんな技がフェンシングにはある。

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『リポスト』

フェンシングの最高峰カウンター。

剣を払い攻撃権を奪った状態での返突。

 

これは相手より1枚でも多く同じ数字を持っていた際に可能だ。

 

「飛び込んで、ファンデウ、2を2枚!」

「パリィ、2を2枚!そしてリポスト!最後の2!」

 

これで決まりだ。おお、まさにフェンシング!美しい。

この枚数のときの移動攻撃の際に一番決まるだろう。相手1枚、自分2枚のときも同じことは可能だが、1枚で飛び込んでくることはなかなか無いだろう。パリィが容易でリポストも受けやすいからだ。

 

逆に自分が3枚のときに、敢えて1枚で飛び込む手もある。もし、相手に2枚あれば撤退せず、パリィ→リポスト。しかしこっちにも2枚あるので、再びパリィ→リポスト。決まりである。

 

このあたりは駆け引き。

前述の通り、出来るだけ後退はしたくないゲーム。

「移動+1枚攻撃」がブラフなのか誘いなのか。

カウンティングも含め非常に面白いところだ。

リアルタイムのスポーツをゲームにするのは難しいが、これは見事な出来である。『野球盤』に並ぶ完成度ではなかろうか。

ややコンポーネントが寂しい気もするが、そこは忠実な再現として留意しておこう。


仲間内では、このゲームが最も強い者のことを、敬意を込めて「ニート剣士」と呼んでいる。

現在のタイトルホルダーはshim。いずれ奪ってみせよう。

タイトルマッチはいずれプレイ記にて。