アクワイア

「申し訳ありません」

 

深々と頭を下げる。

誠心誠意を込めればきっと分かって頂ける。

 

ルームサービス絡みのトラブル。

お客様は大層立腹されていたが、最後は謝罪を受け入れて頂けた。

 

コンシェルジュになって数カ月。

ホテルの「何でも屋」とも称されるこの仕事。

勿論、容易い仕事ではない。

ようやくお客様や上司、同僚の信頼も勝ち得てきた。

 

最近は当ホテルの株価もうなぎ昇りだと聞く。

良いことだ。

でも、なんで急に?

きっと当ホテルの素晴らしさが認知され始めているのだろうな。

これからもこのホテルの一員として盛りたてていこう。

そして、いずれは業界No.1のホテルに・・・

 

「コンシェルジュ、大変です!」

「?」

「コ、コンチネンタルホテルに買収されることが決定しました」

 



・・・

「姉さん、事件です…」



Rule&Analysis


モノポリーと並ぶ古典的名作。


立体的コンポーネントのHasbro版が欲しかったのだが、なかなか買えずにあきらめ、結局は入手が容易な平面コンポーネントのAVALON HILL版を購入した。

Acquire:手に入れる、買収する

 

手に入れるものはホテル?株?

違う、だ。

 

ホテルチェーンに投資して稼ぐボードゲームであり、M&Aの体現である。
最初に言っておくが、大きくなるであろうホテルの株を予想し、自分でもなるべくホテルも大きくして、最後は立派に育ったホテルを誇りに思いつつ配当を貰う、こんなゲームと思っていないか?


・・・それでは長者番付に名前は載せられない。


 

「毎月少しずつお金を貯めていきなさい。そうすれば年末にはびっくりするでしょう。あまりの少なさに

―アーネスト・ハスキンズ―

 

 

「大金を得る」ってのは、神頼みや海路の日和の先ではなく、具体的な勝算や策謀の彼方にある。待っていたって駄目なのだ。

 

株を購入する元手がない?吸収合併される配当金を使え
潰れるホテルが分からない?自分で潰せ

 

こんなゲームである。

そもそもこのゲームの販売権利自体もバシバシ買収されている


では、もうちょっと詳しくルールを。

手番でおこなうことは、
1. 手持ちの建物タイルを番号のところに置く
2. 株券を買う(3枚まで)
3. 建物タイルを1枚補充
これだけ。
但し1の終了時にある条件を満たすとイベントが発生する。

一つ目は2個以上のタイルが並んだ時。

このときはホテルを建てられる。ホテルチェーンは7種類あって、まだボード上に無い好きなものを建てることができる。ちなみに株価は少しずつ異なり3パターンある。ボードにホテルが現れたら、その株券を購入することが可能になる。

ちなみに建てた人はボーナスで1枚貰える。

二つ目は2種のホテルチェーンが置いたタイルで連結されたとき。

このときは吸収合併が発生し、小さいホテルは大きいホテルの一部と化す。吸収されたホテルの筆頭株主と次席の株主が配当を貰い、さらにその株券を売ったり、吸収した側のホテルの株券に変換できたりする。

 

実はこのゲーム、途中でお金を得る方法は、この吸収合併が発生

したときしかない。

もちろんゲーム終了時にも株主は配当を貰えるが、そもそも

転がす元手が無ければその株券も買えないのである。

決算前の株券など紙屑、お金に換えてナンボだ。

 

つまり、潰れそうなホテルの株券をガンガン買う、または

自分のホテルをガンガン潰す、というのが基本戦略。


一度潰れたホテルの株券を敢えてキープし、

再度建てる→即潰す

のも有効。

二人くらいで談合してこれをやると非常に強い。

そしてこれに乗れなかった人は当然貧乏になる。


資本主義の明暗くっきり。

他人を蹴落とし、有望な人とだけ組み、ひたすらにお金を儲ける。


凄いゲームだ。

このあたりの感覚は経済慣れ、もといプレイしていないと勘所が分かりづらいので、経験者は最初にアドバイスをしてあげるべき。
 

ルールはそれほど難しくないし、やってることは下衆いので

癖になること間違いなし。


これを機に

     Mergers and Acquisitions、

体験してはいかがでしょう?

 

プレイ記