テーベ

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世界最古の愛の詩を知っていますか?

 

それは、ある墓所の壁に刻まれています。

 

 

 

 余が愛する者はただひとりのみ。妃にまさる者はいない。

 

 生きていたとき、妃は至高の美を誇った。

 

 今、妃は遥か彼方に去り、余の魂も奪い去った。

 

 

 

1904年にイタリア人考古学者「エルネスト・スキャパレッリ」は、テーベの西のデル・エル・メディーナにとある王妃の墓を発見しました。それは、偉大なファラオと称された「ラムセス2世」に最も愛された『ネフェルタリ』妃のお墓でした。

 

 

輝く黄金や煌びやかな装飾品の発見だけが『発掘の成功』ではありません。

 

 

紀元前1300年前の愛しく切ない弔文。この詩が刻まれたネフェルタリの寝室は、過去発見されている王家の墓の中でも最も美しい墓所と言われています。

 

Rule&Analysis

 

 ギリシャ、クレタ、エジプト、パレスチナ、メソポタミア。そこには歴史的遺産が発見された古代遺跡がある。

 

 このゲームは1901年から1903年の間に、それら各地で遺跡を発掘し、考古学者としての栄誉を手に入れるゲームである。2007年ドイツゲーム大賞最終候補になっていた。

 発掘品はそれぞれ対応する遺跡袋に入っており、その中からクジのように引くことで得られる。このとき、その遺跡に対する「知識」に比例して、引ける数、すなわちチャンスが増加するのである。

 では「知識」はどうやって手に入れるのか?勿論勉強だ、愚問である。ヨーロッパの各地で、古代文明の知識を学んでから現地に飛ぶのである。ただ闇雲に遺跡に行っても大した発見はない。

 このゲームには幾つか面白いポイントがある。

 

 一つ目は手番。このゲームは知識を得たり、移動したり、発掘したりすると、それに必要な時間(単位は週)を消費する。使った時間はボード外周のトラックで示していく。そして手番は毎回最後尾にいるキャラクターが行うのだ。凄く時間のかかること、一番は「発掘」だが、そういったことを行うと、暫く手番が回ってこないなんてこともある。

 

 二つ目は、遺跡袋の中には当たりの「発掘品」と、はずれの何も書かれていない「がらくた」があること。発掘品は持っていってもいいが、「がらくた」は再び袋の中に返す。そう、誰かの発掘後になればなるほど「がらくた」密度が上がっているのである。最初は50%程度で発掘品を得られるが、他人に荒らされた後は最悪で6%程度になるのだ。要は早い者勝ち。これは、遺跡の中には盗掘者たちに既に荒らされて、「何も残っていなかった遺跡」もあったという切ない史実を皮肉っているようで面白い。

 しかし先ほど「知識」が無いと沢山引けないと言った。どのくらい違うのか。知識が1しかないと、8週間かけてたった「1枚」の発掘品タイルしか引けない。1年が52週しかなく、回りたい遺跡が5か所もあるのだから、効率が悪いったらない。一方、知識5までつけてから向かえば、同じ8週間で「5枚」引くことが出来る。これは効率がいいが、もしこの「知識」をつけている間に、すでに誰かが発掘を行っていれば当然「当たり」は減っている。沢山引いても何も出ないことがあるのだ。もし最大発掘数の10枚を引ける知識があっても、遺跡に発掘品が一つしか残ってなければ、約35%で何も得られない計算になる。

遺跡袋~エジプト~
遺跡袋~エジプト~

 どのあたりまで「知識」を手に入れてから遺跡に向かうか。このジレンマが最大の楽しみであろう。他人が袋に手を突っ込んでいるときは、ひたすら外れを祈るコールが発生する(笑)

 

 運が悪くて発掘品があまり引けない時も、ヨーロッパ各地で学会を行ったり(これはカードとして手に入る)、それぞれの遺跡の知識を誰よりも得ることでポイントを稼いだりも出来る。決して単純な「右手ゲー」ではない。

こだわりの発掘物
こだわりの発掘物

 勿論、圧倒的な「引き」の前に完敗することもあるだろう。しかし、過去の考古学者の中には、人生全てをかけても納得する結果が得られなかった人、夢破れた人が大勢いたはずだ。ちょっとゲームの遺跡発掘が上手くいかなかったからって何を怒ることがあろうか

 このゲームの「発掘品」は全て実在するものになっており、製作者のこだわり、考古学への愛を感じる。苦労を重ねた偉大な先人達によって、実際に発掘された遺物、そして歴史を紐解く手がかりを、自分で発見した気分を味わえるロマン溢れる素敵なゲームであるといえよう。

 

そんな「こだわり」に応えるため、

 コラム<ファイストスの円盤>を。