キャメロットを覆う影

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「行かれるのですね」

「・・・はい」

「彼らと争うことになるのですか?」

「アグラヴェインを斬ってしまいました。ガヴェイン殿は決して私を許さないでしょう」

「・・・マリアガンスのときからですね、あなたとは」

「・・・ええ、長い付き合いでした・・・でも、お別れです」

「・・・はい」

「・・・」

「・・・」

「姫」

「はい」

「主君も騎士道も裏切った私ですが、あなただけは裏切りません。もし、今回の件であなたが危機に瀕することがあれば、必ず駆けつけます。我が剣、アロンダイトに誓って」

「ありがとう・・・さようなら、湖の騎士・・・」


Rule&Analysis

 

 アーサー王伝説に則った協力型ゲーム。この作品も「パンデミック」同様人気が高いのだが、日本語化されておらず国内流通も少ない。日本語化かつ再販された「パンデミック」に比べ入手難である。

 コンポーネントに定評のあるDays of wonder社なので、セットアップするとかなり壮観である。円卓の騎士フィギュアはいつか着色したい。

 

 ルールはプレイヤーが円卓の騎士のひとりとなり、キャメロットを襲う幾多の災厄を振り払うのだ。ある一定のノルマをクリアしたらプレイヤー側の勝ち。

 

どんな災厄(クエスト)が襲ってくるかと言うと、

 



サクソン人・

ピクト人の侵攻

 




黒騎士の襲来

 




沈むエクスカリバー

 



ランスロットとの

一騎打ち

 




聖杯探索

 




ドラゴン退治

 

同時にトラブル発生し過ぎである。不幸な国だ。

これらのイベントに関しては<コラム>でまとめてみた。

 

これらを皆で協力しながら解決していくのだ。
具体的には手番の最初に「悪いこと」が起きる。これは黒山札を順にめくっていく。その後にプレイヤーがアクションをする流れ。アクションで問題発生している地点に移動したり、手札からカードをプレイしたりする。

勝敗や成功判定はカードのプレイで行う。


例えばサクソン・ピクト人のクエストは、黒山札からサクソン・ピクト人のカードが5枚めくられる前に、白カードで「ストレート」を作れば良い。


 これがプレイヤー側の使用する白カード。1~5の数字と聖杯がある。この他に特殊カードもあるが今回は省略。

 勝敗は役とか数字合計で判定するものが多いが、エクスカリバーと聖杯のクエストは毛色が異なり、手札からカードを必要枚数捨てることで達成される。

 エクスカリバーはこんな感じ。見た目だと5枚捨てれば引き寄せられそうだが、黒山札から「エクスカリバー沈めるカード」が出ると一歩後退するので、実際の必要枚数はもっと多い。


 そしてこのゲームは必ず協力が必要である。プレイヤー1回の行動に対して、黒山札からも1枚めくられるからだ。例えば4人プレイ時。前述のエクスカリバークエストにひとりで挑み1マス引き寄せたが、また手番が来る前に他のプレイヤーのターンで3マス沈むことだってある。これでは永遠に手に入らない。「こ、こんなエクスカリパーなんていらないやい!持ってけギルガメッシュ!」となるのがオチだ。


 そうならないために基本戦略は「複数人で一点集中」となる。

 

 そしてもうひとつの重要なルールで「自分の正確な手札を他のプレイヤーに明かしてはいけない、ほのめかしまで」というのがある。パンデミックとは正反対。だから「俺はランスロットに勝てそう」とか「私だけでは聖杯無理だ」とかそんなロールプレイング的な会話が発生する。この制限はゲームを良く知っている人の必要以上の「リーダープレイ」を妨げるので、個人的にはアリだと思う。パンデミックもこれくらいでいいのでは?

 

 シンプルなゲームではあるが、クエストや特殊カード等でかなり細かいルールが多いので、日本語化されていないのは残念。ネットで探すか英語が得意な人に訳してもらおう。

 言語の壁はあるが、個人的には協力型ゲームの中でも有数の面白さだと思う。ゲームの難易度は高めで、まだ勝利が見えない中盤の絶望感の与え方は見事。本当に苦しんだ上での勝利を味わえる。「裏切りもの」を設定する特殊なルールもあるのでやり応えは十分である。

 

 アーサー王伝説を知らなくても楽しめるが、やはりある程度の知識があった方が楽しめるだろう。コラムにて。