Q-JET

photo credit: Pink Hovercar via photopin (license)

「バック・トゥ・ザ・フューチャーって知ってる?」

「知ってるよ」

「あの映画内では2015年にホバーカーが完成してたんだ」

「へえー、流石にその年には間に合わなかったね。

  あ、そういえば、21エモンって漫画知ってる?」

「藤子・F・不二雄でしょ?」

「あれも2018年なんだ。やっぱりエアカー飛んでるんだよね」

「昔の人は2000年初頭には車も空を飛んでるはず、って

  思ってたんだなあ」

「なかなか実現しなかったことになるね」

「やっぱ交通法がね、整備出来るのは2次元までってことだな」

「そうだね、ふつうに考えて実用時の懸念が多すぎるもんなあ」

「でも摩擦から解き放たれた分スピードは出るから、こうやって

  限られた場所でレーシングカーになってるわけだ。

  お、いよいよ始まるぜ」


 

「あ、ふと思い出したんだけど」

「ん?」

「人は土から離れては生きられない、って名言あったね、

  誰の言葉だっけ?」

「あれ?誰だっけ?」

「昔のアニメだった気がするんだけどな…」


Rule&Analysis


『アベカエサル』というチャリオットレースのリメイク。

傑作レースゲームとして名高い。


個人的には雰囲気がレトロな原作の方が欲しかったのだが、まったく手に入りそうにないのでこっちを購入した。

内容は一緒。

遊べるだけでも感謝である。

ルールは簡単。
順番に手札から1~6のカードを出し、その数だけ進んでいく。
コースを早く3周したマシンの勝利。

ちなみに手札は3枚。自分用に山札があり、手札を使うとそこから

補充できる。
プレイヤー全員のカード枚数、数字は同じで、合計値は84である。

もしこれが只のすごろくであれば、ちょっとでも大きい数を引いた人が勝つ「超駄作」となる。

しかし、レースゲームにとって、実に当然かつシンプルなルールをつけたら、これが「超名作」となったのだ。


そのルールとは「ライン取り」


1マスは1機までしか入れない。

また誰かがいるマスを越えて進むことは出来ない


つまり1マスしかない場所で、すでに誰かが入っていた場合は、後続のマシンは追い抜かすことが出来ないのだ。

カードを出せない場合はパスしなければならない。これは不利。


さて、レースにおいて「ライン取り」が最も重要な箇所は?

当然、コーナーである。


このゲームのポイントは、ストレートで「6」を出してかっ飛ばすことではない。
勝負はまさにこの「ライン取り」、すなわち「コーナー」なのだ。


コーナーの基本中の基本は「slow in, fast out」。
直前に必要なだけブレーキングをして、立ち上がりを一気に駆け抜けること。デジタルのレースゲームもそうだが、膨らまないようゆっくりコーナーに入るだろう。


このゲームの勝負どころも、ゆっくり(小さい数で)コーナーの

インを走れるかどうかにある。

先頭のマシンはゆっくり走ることで、後続にパスをさせられる可能性がある。逆に、後続はここを低速で合わせることが、後の逆転のためには必須となるだろう。

パスはすればするほど勝利から遠ざかる。

手札はたった3枚だが、コーナー前にはなるべく小さい数を残して

おきたい。


ちなみにカーブ中に「前方のマシンを避けラインを斜めに抜ける」という選択肢はない。


確かに、このゲームは真っ直ぐだけでなく、1マス斜めに進むこともできるのだが、

こういった仕切りのところではレーン変更は出来ない。


カーブでは、えてしてこの仕切りがあるので、「内側」か「外側」しか選択肢はないのだ。


インで詰まるのは嫌だ!
だったらガンガン外から捲くればいい!
と思っている貴方。


カーブのマス目を数えてほしい。

一目瞭然だが、外のカーブはマス目が多くなっている。
先ほど、手札・山札の合計値は84と言った。

このレース、3周を最短距離で走った場合は初心者コースで80マスである。つまり、外回りばかりしてペース配分を間違えるとガス欠を起こしてしまい、ゴールさえ出来ないのだ。


燃料には重量がある。わざわざ余計に積んでマシンを重くはしないだろう。


あとはルールの補足だが、ゴールまでに一回ピットインをしなければならないというのもある。このピットは、

こんな感じで狭い
ここも詰まるポイントになるので入るタイミングは間違えないようにしたい。


スポーツとかレースとかリアルタイムのものは、ボードゲームで

表現するのは難しいと思う。(アンギャルドでも述べた)
しかし、これはスピード感ではなく、敢えてコーナーの駆け引きに重点を置くことで、見事にレースの面白さをアナログに還元した。


素晴らしいの一言である。


非常に盛り上がるゲームなので、初心者を誘うのにもオススメ。

デジタルでなくアナログでもここまで作れるのである。