第7版 ~王と騎士と影の色~

『ダウスィーとサルタリー』


 MtGの変革となった出会いのひとつ目は、他校のプレイヤーであった。


 彼とはどこで出会ったか?


 実は私は2学期から塾に通うことになった。しかも日曜日に。嫌々なうえ、途中参入の私は学校より進んでいる授業に全くついていけず、なんとも辛い時間であった。


 塾の教室で、ああ、この時間も皆はプレステしたりマジックしたりポコペンしとるんやろーな、と自分の境遇を嘆いていたら、ある日視界にマジックが飛び込んできた。最初は強い願望が幻覚となって現れる、マッチ売りの少女的なやつかと思ったが、いやいや、私の意識は清明で凍えてもいなかった。


 なんと同じクラスの生徒がマジックを触っていたのだ。早速意気投合し、まずは次回お互いに持ち寄って、休み時間に対戦してみようということになった。塾へ行く楽しみが出来た瞬間でもあった。


 一週間経って次の塾の日。勝負の卓についた私が見たものは、

「1ターン目、暗黒の儀式から・・・」

「カーノファージと・・・」

「ダウスィーの怪物でエンド」


・・・


色々聞きたいこと満載であったが、とりあえず・・・


「・・・しゃ、しゃどーって何?」


 シャドーとは飛行と同様にブロックされにくい能力である。シャドー持ちにしか止められないが、逆にシャドーしかブロック出来ない、要はアングラな住人なのだ。

 これは主にラースサイクル(テンペスト、ストロングホールド、エクソダス)の白青黒のみに許された能力で、飛行よりも絶対数が少ないため、圧倒的にブロックされにくいのだ。


「う、うちの子にシャドーはいませんが・・・」
「じゃあブロック出来んね、はい脊髄移植」

地底から滅多打ちで敗北。王様が出る間もない。


シャドーずるくない?

シャドー強くない?

よし、使おう!


となったのは自然の摂理であろう。


 シャドーにも驚いたが、よりインパクトがあったことは「単色」のデッキであったこと、上級者向け拡張セットの強いこと。

そしてこの、

『暗黒の儀式』


 私がMtGで最も好きなカードは、この日に出会ったのだ。
最も存在は依然から認知していたが、それまでは「奈落の王」のシンボル3つを出しやすくするためのカードだと思っていた。


こんな風に一瞬の爆発力をもたらすためのカードだったとは!


奈落の王
黒騎士
シャドー
暗黒の儀式


上記の共通点?黒でしょう!
というわけで、この瞬間より今に至るまでの黒使いライフが始まったのである。

早速、その彼から数体のシャドーをトレードしてもらった。

もっとも最初は黒単ではなく、青を削っただけの白黒にしていた。理由は、『沼』がそんなに無かったこと、白にもシャドーが多いこと、そしてやはりエンチャントやアーティファクトに触れる安定感は捨てられなかったからだ。

 

 あのとき見て、魅せられた『暗黒の儀式』に惹かれつつも、私が「不安定な」黒単にするのはもう少し後になる。

 

 というわけで、MtG発展途上国の我らが校区に持ち込まれた新デッキ「白黒騎士シャドー」はすこぶる好調であり、周りの皆に

「シャドーずるくない?強くない?」

と、やっぱりどっかで聞いたセリフを言われた。

 

 そのうち白系デッキのT君がシャドーを取り入れたので、少し風当りは弱まった。赤を絡めていたN君はまだしも、緑を使っていたM君はシャドーには対抗困難で、よく私とT君にボコボコにされた。M君がストンピィで大暴れするのももう少し先なのだ。

 

 塾の彼はカードもたくさん持っていて、よく見せてもらっては友達に情報を還元したものだ。ときには仲介役となってトレードもした。はっきり言ってあまり良心的ではなかったので、ややシャークであったが、高い授業料を払ったと思うしかない。

 

 なんにせよ、これでまた我々のMtGがレベルアップした。ウィニーや上級セットの強さや単色デッキがインプットされたのだ。

 次回はもうひとつの変革を起こしたものについて。

 

 余談だが『白騎士』を初めてみたT君はこう言った。

人形劇?」


確かに(笑) やっぱ黒騎士の方がかっこいいな。